佐藤つかさ
今宵の作品はこちら……。
幻影金魚
作:takao 様
Ncord:N7441D
あなたは、自分の一番古い記憶をご存知でしょうか?
公園の砂場?
蛍光灯の光?
電車のうつろい?
いろんな記憶があることでしょう。
だけど、だけど……。
彼女の思い出は、みんなとちょっとだけ違っていたのです。
それは暑い暑い夏の日。小学六年生の記憶。
年上の従兄弟に押し倒された記憶。
自分の「女」の部分に触れられた――苦い苦い思い出。
あれはきっと、彼女にとっての―― 一番古い――【雌】の記憶。
そして、それを思い出すたびに見えてくる、
ふわふわと浮かぶ、赤い金魚。
まるで生理のような、まるで破瓜のような――とってもとっても赤い色……。
捕獲器に続きまして、わたしのお気にいりの紹介です。
いやー、しょっぱなから衝撃のボディーブローを叩き込まれましたよ。
物語の登場人物である少女――あさぎは、従兄弟である清志郎に自分の「女」を触られてしまったことを、16歳になった今でも忘れられないでいました。
いえ、むしろ歳を重ねるたびにそのしこりは染みのように広がっていくのです。
まるで陽光を蝕む黒点のように。
自分の周りで舞うのは真っ赤な金魚。
ふわふわ浮かぶその姿は――まるで海月(クラゲ)
四年前の【あのころ】から見えるようになった――不可思議な幻。
過去の体現たるそれを忘れたくて、今日も彼女は夜に溺れる。
ほっそりとした白い足でシーツを波立たせながら、足の間ではしたない水音を跳ねらせる。
蕩けていく脳を駆け巡るのは、どうしようもなくはしたない夢。
……やがて、快楽に果てた彼女は窓を見る。
四角く切り取られた暗い空。
空を泳ぐのは――月か金魚か。
赤い赤い幻が、今日も彼女を狂わせる。
……って、ぎゃー!
解説しようと思ったら、また文書いちゃった!
いや、もう大好きなんですよこの小説。
X指定方面を書いていらっしゃる方らしく、性的表現がとっても慣れてるんですよね。
読むたびに「あ、それ分かる!」って共感したり、「うんうん、そうだよねー」と思ったり(あ、どっちも意味同じだorz)
繊細な文章表現がとっても素敵なんです。
以前の紹介で解説しました【おいしいチェリーのいただき方】はコメディ方面でしたが、こちらはまじめにヒロインの心理描写を綴っています。
シリアス方面がお好きなレディには、かなりお勧めの一品ですよ?(笑)
もうラストを読んだときには「ううっ、良かったよぅ……」と涙で濡らしたものです(もうだばだばと/笑)
15禁ですし、いささか刺激が強すぎるので、TASPOに申し込める年齢の方でないと危険かもしれません(笑)
でも、お勧めの小説ですよっ!
それではっ。